『母性をつくりなおす』 
バーバラ・K・ロスマン 著 広瀬洋子 訳
勁草書房/4000円+税

REBORNコメント
 先端的生殖医療によって、今、母性が根源から変わろうとしている。アメリカでは、代理母、養子縁組、卵&精子提供がビジネス化され、子どもはまるで生産物のように扱われているとロスマンは指摘する。そうした状況を、社会学の教授として、フェミニストとして捉え分析した本。


 フェミニストと一言で言っても、母性に対する考え方はいろいろだ。女性が仕事を続け、エグゼクティブを目指すために代理母や卵提供を推進するフェミニストもいる。元来、麻酔分娩もフェミニストの声から上がったと言われている。一方で、ロスマンは自らを「ラディカル・フェミニスト」と呼び、自然派として過激に論を展開する。母親とは生物学的な遺伝的な母ではなく、産んだ人であるとはっきり名言し、「遺伝よりも養育、家系よりも愛情、親族よりも互いの思いやりのほうが重要である」とする。

 けれど、こうしたこだわりはなんだか日本人にはちょっと違和感があるような気もする。日本には伝統的な自然感があり、イデオロギーではなくて、自然を体感してきた土壌がある。とはいうものの、これからはそんな自然感がどんどん薄れていくだろうし、実際、代理出産を求めて海外に出ていくカップルが出現している時代なのだ。需要があるからそうなっていくというのではなくて、生殖医療によってつくられる新しい母性や家族について、どのように捉えていくのか、考えていかなければならない。

REBORN きくちさかえ


本文から

第1章より
 生殖技術を背景とした新しい母性の概念は、母性を活動、サービス、労働とみなす。したがって、子どもたちは母親の労働によって生産された製品となる。
 私はこうした考えを受け入れることはできない。母性という、親密で喜びや驚きにあふれた素晴らしい経験が、このようなやり方でおとしめられることを許すわけにはいかない。
 今、社会は岐路に立っている。ひとつの道は、子育てや、人々がお互いにケアしあう人間関係に注目し、さまざまな家族の関係を尊重する道である。(中略)しかし、もう一つの道は、子どもの商品化を反映した母性を再創造する道である。残念なことにそれはすでにはじまっている。私たちの社会が現在抱えている問題はこうした商品化のプロセスの行きすぎによって生じているのだ。

第2章より
 私は助産術とは、フェミニスト運動の実践であると考えている。(中略)助産術は、出産の苦しみを助け、出産そのものを女性の望むように作りあげる。(中略)助産術は妊娠を、心と身体の二元論から捉えない。父権制的な思想によって、女性を胎児から疎外させない。助産術は、二元性を拒否するというより、心身の一体を求めつづける。
 (中略)私たちは、助産婦に権限を与え、助産術を医師の管理化におくのではなく、完全に自律的な職業として実践できるようにしなければならない。


目次

謝辞

第1章
序論/家族について、ベビーM(現代のフェミニズムの寓話)、三つのイデオロギー
父権制イデオロギーにおける母性/女性の種、遺伝学的関係、父権制イデオロギーと先端的生殖技術、ベビーM(現代の父権性の寓話)
技術社会における母性/機械じかけの母親、技術社会と自由主義思想
資本主義における母性/所有物としての身体、所有物としての子ども

第2章
序論/新しいビジョン
関係としての妊娠/身体的関係、社会的関係
中絶の再定義/中絶の歴史、作り出された胎児、中絶の医療化、中絶再考
養子縁組における権利と義務/問題をもって問題を解決する、孤児(その実像と虚像)
不妊/障害としての不妊
医療にとりこまれた母性
胎児の力
フェミニストの実践としての助産術/悪循環は断ちきれるか
ベビー・ドウ(関係は続く)/母親に対する弁護(反論)
子育て/管理者としての母親、ワーキングマザー、改革のために必要な道徳
父親であること/問題のありか、子育ての能力、関係としての父親と子ども
<代理母>について/政策的問題、価値観の問題
母性再創造(フェミニスト社会政策をめざして)/リベラル・フェミニズムを超えて、母性に関するフェミニスト社会政策の構築に向けて

アマゾンで買える
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4326601043/qid%3D1076597431/250-0330548-9421006

cover  


このジャンルの書棚に戻る お産図書館INDEX