『お産!このいのちの神秘―二万例のお産が教えてくれた真実』
吉村正 著 きくちさかえ 写真
春秋社/ 2003年/1700円+税

REBORNコメント
伝統的な日本家屋を建て、そこの和室で自然なお産をしている愛知県岡崎市の吉村医院。これは吉村正医師が医院のお産の様子と、氏の人生観、哲学、美学をぞんぶんに語った本だ。
吉村医師は、世界の現代医療の出産のあり方に風穴を入れた風雲児ミシェル・オダン博士のよき理解者であり、オダン氏と同じように日本における自然出産の第一人者なのだけれど、ここ数年、その考え方や実践でオダン氏を超えた存在になったと私は感じている。こんな産科医は、世界中探してもほかにいません。 
帝王切開率、会陰切開率、そのほか医療介入の低さは驚くほどだが、それを支えているのがお産をじっくり待つ姿勢。これはかなりの精神力と技を必要とすることだ。「私は全身全霊で覚悟する。そうした苦しみがあってこそ、お産の本当の姿が見えてくる」と吉村氏は言う。
お産を医学的側面からだけでなく、哲学、美学の面からも探り、さらにお産の本質(と私には思えるんですが)である、宗教的な心情までもが語られる。お産の本としてははじめての試みだ。実際、お産の場で展開される自然の回復力は神秘そのもの。お産は何が起こるかわからない、とよく言われるその言葉の中に、実は驚くほどいい方向に転じる自然の力が含まれていることはあまり知られていない。
「妊婦がからだをよく動かしていると、胎児も健康になり、お産の場で一時心音が落ちたとしても、サポートする人々に支えられたあたたかい環境の中では、心音は回復し、赤ちゃんは自分の力で生まれてくる」
お産の世界に新しい道を開く、吉村医師の入魂の1册。きくちが写真を添えています。

REBORN きくちさかえ

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吉村語録より
--お産と子育ては人間に残された最後の自然である。
--言葉というのは道具のようなものに過ぎない。人間というのは本来、魂と魂で通じあえたんだと思う。
--現代ってのは本当に、いのちを乾かして、干物みたいにしてしまっていますよ。
--いのちは満ち満ち、女たちはお産に沸きたつ。

本文より
 この頃、私、すべてのお産を病院で管理して行なおうとする考え方自体、間違っていると思うようになりました。産科医療は、医学的安全性という名のもとに、分娩を合理的にシステマティックに管理していますが、ほんとうにそうした管理が安全を保障しているでしょうか。
 お産は日常生活の営みのひとつです。女性は元々、産むという本能的な力をもっている。赤ちゃんもまた、生まれ出る力をもっています。その潜在的な力、人間が持っている自然治癒力と言ってもいいと思いますが、それがお産本来のメカニズムを形成している。それは何百万年の人類の歴史の中で、自然が育んできたものです。医学的側面からのみ分娩を見て管理してしまうと、その自然なメカニズムは規制され、女性の本能的な能力は抑えられてしまうのです。


目次

まえがき

第一章 よみがえるお産
 「お産の家」完成/和室での出産/薄明かりの中で/野生の声/自由な出産姿勢/Sさんの体験談/天然素材の環境/石原棟梁の談話/古典的労働/友だちづくり/みんなでピクニック/キャーキャー、ワクワク、ニコニコ/現代のお産は安全か/一億円の授業料/予防医学に徹する/産科的異常/何ごとも体験しなければわからない/いのちは矛盾に満ちている/よみがえるお産/Mさんの体験談

第二章 古いものはかくも美しい
 茅葺屋根の古屋を移築/井戸から水を汲み、薪を割り、風呂を焚く/骨董/無意識がつくる美しさ/十二歳の学徒動員 /軍国教育の洗礼/岡崎空襲/終戦/外科医の父/父親のカツ/外科産婦人科/病院を継ぐ

第三章 人はなぜ自然なお産にひかれるのか
 大脳新皮質と視床下部/新しい脳と古い脳のせめぎあい/人間動物園/家畜化するお産/母と子がもつ潜在能力/お産のセクシュアリティ/授乳もセクシー/授乳について(岡野婦長)/母子分離/お母さんと赤ちゃんはつねにいっしょ(岡野婦長)/愛情を培う/ほんとうの意味での女の自立/男と女/産科学は男の論理/お産の哲学と美学

第四章 いのちを感ずる心
 お産の神秘/いのちの不思議な力(岡野婦長)/祈るこころ/Fさんの体験談/生まれる人を迎える/ある助産婦の体験談/宗教的心情/宗教性を現代産科学に生かす/里山に感ずる/稲の文化と麦の文化/目に見えないもの/犬が死んだ日/富士に思う/火の道具/自然/シンプルに生きる/Nさんの体験談/潜在自然殖生

吉村先生のこと(きくちさかえ)


 


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