Human Birth Park

DATA

会陰切開のデータ

 「自然に切れる傷よりもいい」「赤ちゃんが苦しいので早く出さなければならない」など数々の恩恵が信じられている会陰切開。しかし、産院によってほとんどおこなわないところもあれば全例におこなうところもあり、あまりにも施設差がある処置です。全国的に大変広くおこなわれている処置ですが、冷静な議論による再検討により、適応が明確になることが望まれます。
 国際的に知られる研究には、次のようなものがあります。


●「西バークシャー 会陰部マネージメント試験」スリープ他
(英国医学雑誌1984年)
SleepJ他:West Berkshire perineal management trial.
British Medical JournalVol.289 September-587,1984

1000名の女性が無作為に選ばれ、二つのグループに分けられた。
両グループはどちらも経膣出産の最中の傷が最小限になることを目指したが、一方は、赤ちゃんが元気な限り会陰切開の使用を制限し(制限グループ)、もう一方は、もっと自由におこなった(自由グループ)ところ、会陰切開率は最終的にそれぞれ10%、50%となった。無傷ですんだ人は、制限グループでは33.9%、自由グループでは24.3%で、制限グループの方が多かった。ただ、前部の裂傷は制限グループの方が多く重症ケース5例中4例がここに含まれた。
産後10日及び3ヶ月後で調べ、2グループの間に新生児の状態に大差はなかった。(アプガー・スコア7点以下の赤ちゃんは、制限グループ5.4%、自由グループで4.6%。NICUに入った赤ちゃんは、制限グループ5.7%、自由グループ7.6%。)母親の痛み、泌尿器系の症状にも大差はなかった。
制限グループは、一ヶ月以内に性生活を再開した人が多かった。



●「マタニティ・センターと第三次病院産科の会陰切開と会陰裂傷発生における役割」
ウィルコックス他(アメリカ産婦人科学雑誌1989年)
Willcox LS他:Am J Obstet Gynecol Vol.160 No.5 1-1047,1989

助産婦が介助する(アメリカの助産婦は、会陰切開ができます)マタニティ・センター「ブース・マタニティ・センター」と産科医が介助する「トーマス・ジェファーソン大学病院」で会陰切開の使用と会陰裂傷の頻度を調べた。
無作為に選んだ1262名の女性を検討した結果、トーマス・ジェファーソン大学病院ではブース・マタニティ・センターの二倍の頻度で会陰切開がおこなわれ、会陰切開の使用は第1度、第二度裂傷の減少には関与していたが、第3度の裂傷は逆に4倍増になっていた。



●「会陰切開――そのルーチン使用は守れるか?」ソープ他(アメリカ産婦人科学雑誌1989年)
Thorp JM他:Am J Obstet Gynecol Vol.160 No.5 -1027,1989

歴史的に会陰切開は裂傷を防ぐと言われてきたが、切開をすると第三度、四度の裂傷を起こしやすくなる。
12の研究報告(サンプル総数49395人)で調べたところ、正中切開をおこなったあとの第三、四度裂傷の発生率は平均6.5%になったが、13研究(サンプル総数38961人)で会陰切開をしなかったお産の第三、四度裂傷の発生率を見ると平均1.4%となった。

REBORN第10号より