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インタビュー

 

5年間で、会陰切開率が93%から5%に減少

 埼玉県木野産婦人科医院副院長 (インタビュー当時・現在は中山産婦人科クリニック副院長) 
 鮫島浩二氏



自然裂傷の予防法
 
 東京都・黄助産院院長 杉山富士子氏



5年間で、会陰切開率が93%から5%に減少
埼玉県木野産婦人科医院副院長 (インタビュー当時・現在は中山産婦人科クリニック副院長) 鮫島浩二氏

会陰切開は誰のため?
 会陰切開をする理由は3つあると思います。ひとつは医師の都合で、忙しい、裂傷がひどくなると縫うのが大変だとか。ふたつめはお母さんの都合で、あまりの痛さにもう我慢できない、といったことです。そして3つめは胎児の都合ですね。
 本来、最終的に会陰切開するべきなのは、「赤ちゃんの心音が落ちていて、胎児仮死が予想される」など胎児側の理由だけだと思うのです。
 僕も以前は会陰切開を当たり前のようにやっていましたが、リーブ法(*)を組み立てるのにあたり、それまで敬遠してしまっていた年輩の産婆さんたちの「いかにして、切らずに出すか」という話に耳を傾けるようになりました。
 さすがに最初は半信半疑でしたが、言われたようなテクニックや会陰の押さえ方を試してみると、結構うまくいったんです。そこで、本気で切開なしにやってみよう、と。それから3年間で、初産婦の会陰切開率が93%から20%へ、ぐっと下がりました。

心音が落ちたら、きちんと本人に聞かせている
 妊婦主体のお産では、会陰切開する、しないの判断は、分娩している本人ができるのが一番いいわけです。そのためには、妊婦さん自身も、分娩前からお産についての知識や理解を深めてもらうことが大切です。
 僕は、母親学級で、分娩監視装置の読み方をある程度教えます。実際の分娩では、胎児の心音を聞かせ、鏡を使ってお産の進行を本人が確認できるようにしながらおこないます。
 そうすれば、赤ちゃんの心音が落ちてきたとき、自分がリラックスすることで赤ちゃんの心音が回復するのがわかるし、何回チャンスを与えても心音が戻らないようだったら、本人も納得した上で、会陰切開をすることになります。
 最終的に会陰切開が5%程度に下がった理由は、産む人も、医師も、助産婦も、「会陰切開を入れないでがんばっていこう」という同じ目標を持ったからでしょう。
 分娩室でこういう気持ちの一致が起こらない限り、会陰切開は減らないと思います。反面、それができて、呼吸など総合的にさまざまな面からいいお産を目指していけば、かなりの率で会陰切開は押さえられると思います。




自然裂傷の予防法
 東京都・黄助産院院長 杉山富士子氏

リラックスしたなごやかな雰囲気が大事
 助産院では妊娠中、妊婦さんと助産婦との関わり方が密接なので、気心が知れた中でお産が始まります。
 妊婦さんがリラックスしてお産に臨めるという事も、会陰の伸展性に関係してくると思います。しかし、その他にもいろいろなくふうをして、安全なお産ができるようにしています。まず、産婦さんと分娩介助者が一体となって、排臨、発露をゆっくり待つという事だと思います。
 お産はどれも違い、ひとつひとつのお産に対して、どれくらい待てるかというデータはありません。ですから、児心音に細心の注意を払いながら、じっくり取り組みます。

会陰マッサージで、お産の感覚をつかむ
 切らないで産むためには、おかあさんの方でも準備が必要です。当院では36〜37週くらいのいつ産まれてもいい時期になると、ほぼ全員に会陰部のマッサージをすすめています。
 まず、助産婦が内診のときに「ここが恥骨ですよ」「ここが子宮に包まれている赤ちゃんの頭」と教え、本人に感じとってもらいます。そして、次に「赤ちゃんが通ってくる道をマッサージして柔らかくしておくといいですよ」と言います。
 マッサージは、お風呂に入ってからだを清潔にしたあと、オリーブ油やホホバ油等を使っておこないます。このとき、爪は切っておくこと。ディスポの手袋を使うのもよいでしょう。
 そうすると赤ちゃんがでてくるイメージもできるようです。
 そして「赤ちゃんが出始めたら頭に触れてみたい」「自分で赤ちゃんを受けとめたい」とバースプランに書く方も出てきます。自分がからだに対してもっと踏みこんでいくためのトレーニングはとても大切で、産む方たちの意識を高めていくと思います。
 会陰部の伸展性に個人差があるのは事実です。経産婦さんの場合は、前回の出産で会陰切開していると縫合した部分が伸びにくいので、娩出時に四つん這いになったり、お尻を高くしたりして赤ちゃんがゆっくり進むようにし、時間をかけ、会陰が十分に伸びてくるのを待ちます。
 会陰の裂傷には、実にいろいろな要素が関わってきます。最終的には、妊娠から出産までのプロセス全体の結果ではないでしょうか。