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女子高校生が作った子育てマップ(千葉県木更津市)
文/三好菜穂子

木更津市の市役所や子育て支援施設などに置かれている子育てマップ。
手作りの温かさが伝わってくるこのマップ、実は千葉県立木更津東高校・家政科の学生4人が作ったものだ。彼女たちが卒業して2年が経つ現在も、改訂を繰り返しながら地域の母親たちに活用され、引越してきたばかりの母親にも「子育て施設が一目でわかる」と好評だ。
マップを作成した永野好美(このみ)さん、今井恵さん、石井愛子さん(板倉 愛さんは仕事のため欠席)、指導された向井幸子先生に母校でお話をうかがった。


4人が作った子育てマップ。15,000部が印刷された。
※掲載されている情報は変更することもありますので、最新情報は公共施設にお問合せください。

地図はPDFファイルでダウンロードできます。(684KB)

●きっかけは「お母さんの子育て負担を軽くしたい」

永野さんには3人の小さな兄弟がいる。家庭科で家庭での問題点を解決し実践する課題が出されたときに、彼女は、子育てに忙しいお母さんの負担を軽くしたいと、子育てに役立つ便利グッズを試作した。電気スタンドを改造し、ハンガーや針金などで作った「赤ちゃんが一人でミルクを飲める哺乳瓶立て」、「入浴時の耳あて」等々…。
でも、実際に哺乳瓶立てを使ってミルクを飲む弟を眺めていると、『授乳中のわずかな時間、大人が手を止めてつきあってあげることのほうが大切なのでは?』と、感じたという。
そこで、お母さんが子育てに専念できる時間が作れるように、家族で家事を分担しあってみた。それと同時に、子育て中の母親が役に立つものを作りたいと、保育園の保護者アンケートで多くの要望があった、病院や託児施設など子育て情報を掲載した地図を仲間と作ることにした。

●地域の交流の中で

まず、情報を集めるために、保育園や子育て支援センターなど子育て関連の施設に出向き、さまざまな人の話を聞いてみた。
「地域でこんなにたくさんの人が子育てについて真剣に考え、協力していることを知り、感動しました」、「一時預かりができる施設や、プレイパークなど自分たちが知らない施設がたくさんあった」と永野さんたちは声を揃える。
子育て中の親の悩みやナマの声を聞こうと、公園の親子に直撃インタビューも試みたり、子育て相談会にも参加した。子育てに悩み親たちからは、「彼女たちを見ていると、今は幼いわが子の育つ道筋が見える」と、逆に感謝されたりもした。
たくさんの人たちの協力で得た情報を、今度は地図にまとめていく。
作成途中から、さまざまな人に見てもらい意見を聞いた。アンケートの中で絶対必要だと感じた小児科のリストは医師会に相談した。また、掲載した電話番号はすべて公衆電話から電話をかけて所在を確認し、作った地図を手に、実際に歩けるか? 目印はあるか? といった確認作業にも時間をかけた。
印刷物は一度作ってしまったら、一人歩きするものだ。一つでも間違いがあってはいけない、と彼女たちの後ろには、地域の大人社会とのパイプ役となり、的確なアドバイスを与えながら、温かく見守る家庭科の向井先生の姿があった。
「活動の間は土日もなくやってきましたが、いつも感動がありました。4人がそれぞれの持ち味を活かして補いあい、誰かが頑張って、誰かが励ましていた。そんな月日を過ごせたことは幸せでしたね」と、向井先生は振り返る。
着手してから3カ月間、ときには朝6時から夜9時まで眠い目をこすりながら、春休みもなく活動して、ついに地図は完成。
途中、地図の原本を誤ってシュレッターにかけてしまったこともあったが、4人はさまざまな資料を探し出し、さらに見やすい地図を完成させた。
その成果は、2004年夏、沖縄で行われた全国高等学校家庭クラブ研究発表会で2位受賞という輝かしい成績となった。

●『助けて!』と言える勇気

「印刷されたものを見たときは感動しました! 向井先生ができあがった印刷物をうやうやしく持ってきてくれて(笑)。時間をかけて一つのことを仕上げるのは胸に残るし、諦めないでやってよかった」(石井さん)。
「大変でしたが、普通の高校生では体験できないことを体験できたし、大人との接し方も学びました」(今井さん)。
「地域のいろいろな人の意見が聞けたし、人と人とが育ち合っていくのにこの経験を活かせたらいいなぁと思いました」と、話してくれた永野さんは、この活動をきっかけに保育士になることを決意。現在、保育士の専門学校に通っている。
発表のために彼女たちが作ったボードには、手を重ねたモチーフの上に「助けを求めれば、支えてくれる人がたくさんある」と書いてある。若い女性の多くが子どもと接する機会もなく、子育てのイメージもつかめない今、「『助けて!』と言えば、近くに支えてくれる人がいる」というポジティブな子育てのイメージを持つことができた彼女たちの経験は大きい。
向井先生は言う。「彼女たちは地域に飛び出し、人と関わることの楽しさを味わい、人と出会うことで、たくさんのことが解決できたと思います。この子たちが大人になって子育てするときに『助けて!』と言える勇気を持てる母親になるかと思うと、その日が楽しみですね」。


木更津東高校ホームページ
http://www.chiba-c.ed.jp/ki-higashi/



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