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REBORN第20号(1998年7月)より 

マザー・フレンドリー・ホスピタルの10カ条
アメリカで、お産団体が統一キャンペーン
――来日したロバータ・スカーさんに聞く――


アメリカでは必読の一冊とされている「いいお産・安全なお産 A Good Birth, A Safe Birth」の著者ロバート・スカーさん Roberta M. Scaerが、ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナルの招きで来日した。スカーさんは、ここ数年アメリカ人助産婦の間で話題の「 マザー・フレンドリー・ホスピタル」を仕掛けた一人でもある。

Reborn河合 スカーさんは、どんな肩書きでご紹介させていただければいいですか。


スカー 私の一番重要な肩書きは「母親」だと思っています。私は、4人の子供を育てていて、その経験が私の活動の源ですね。その次に大事なのはラ・レーチェ・リーグのリーダーであること。それから、バース・エデュケーターの組織「ラマーズ・インターナショナル(旧・アメリカ精神予防性無痛分娩協会 ASPO)」の役員をしています。


河合 マザー・フレンドリー・ホスピタルの提唱しているCIMS(Coalition for Improving Maternity Services 妊娠と出産の環境とサービスを改善する連合・通称キムズ)について教えてください。


スカー CIMSは、30の出産関連団体と50人の個人が参加している連合です。アメリカでは、助産婦、バース・エデュケーター、母親などの団体がたくさんありますが、それぞれに競争心があり、権力も持っていてなかなかまとまりませんでした。
 しかし、ひとつになればもっと大きな力になることを、誰もが気づいていたのです。そこで私は、ラマーズ・インターナチョナルの役員という立場を使って、まず6団体の代表者に「集まって、統一行動プランを何か作りましょう」と呼びかけたのです。そうしたら、みんな交通費を払ってきてくれました。これがすべてのはじまりです。
 回を重ねるごとに参加団体は増え、まとめ役をする者はくたくたになりました(笑)。私も一度司会をつとめましたが、いっぺんにたくさんの野良猫を追っかけるようでした。みんなとても情熱的なので、ある時は、スザンヌ・アームス(世界的な出産ジャーナリスト)が「休憩しましょう!」と大声を出してくれたので、やっと冷静さを取り戻すことができました。
 でも、皆、本当にお産を変えたい一心で気持ちを合わせました。会議室に入るとき、自分の特殊性を入り口において、「さあ、みんなと共通したところを探そう」という気持ちで入室したのです。マザー・フレンドリー・ホスピタルの10カ条は、ユニセフの「ベビー・フレンドリー・ホスピタル」にヒントを得ました。何回かの集まりの時、5人で草稿を書き、出席者全体で見直し、さらにそれぞれ自分の団体に持ち帰って2/3の団体の批准が得られれば決定する、と決めました。
 あの会議には、クラウス夫妻、マースデン・ワグナー、ペニー・シムキン、アイナ・メイ・ギャスキンなどがいて、彼らがすぐ賛同してくれるのはわかっていました。しかし大きな団体が批准するのは大変でした。看護協会の総会では、看護婦助産婦たちが10カ条のコピーを500部作り、議題に取り上げてほしいと頼んだそうです。10カ条が確定したのは、1996年の6月1日――奇しくも、初めての集まりから2年後の同じ日でした。


河合 マザー・フレンドリー・ホスピタルは、現在すでに設定された病院がありますか。


スカー  まだ、ありません。私たちは、出産施設を判断するシンプルな目安が必要、と考えてただ直感的に作っただけでした。ところが今、私たちは認定のための準備に大わらわです。「認定してほしいのだがどうすればいいのか」とたくさんの病院が私たちに問い合わせてきたからです。


河合 認定システムが完成したら素晴らしいと思います。いいお話をありがとうございました。


 通訳・清水ルイーズさん

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