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性教育

分娩室・診察室をを飛び出して、
地域で性教育
 中山政美さん (産科医・中山産婦人科クリニック院長)

REBORN第24号より

 

 埼玉県下の中学校・高校で性教育をするようになって、かれこれ20年になります。
きっかけは、地域に出て性教育をする産婦人科医がまったくといってよいほどいなかったし、さらに大切なものを次の世代へ伝えるという意識を持っている大人がいなかったから。今でも少ないですけどね。養護の先生たちとの勉強会がきっかけになり、そのネットワークで広まっていきました。
 私の講義はスライド中心で男女同席させるのが原則です。子どもの心をつかむのは、はじめの15分が勝負なので、「赤ちゃんの顔が出てきたよ。これがへその緒だよ」って、はじめから出産シーンのスライドもどんどん見せて、ぐいぐいこちらの話に引き込んでいきます。話す内容も中学生と高校生では、だいぶ違いますね。

 今の子どもたちはAVビデオなどで性の枝葉の部分は知っているけど、本当に大事な幹の部分は知らない。そこを教えるのがまず中学1、2年生。基本的な命の大切さ、一人しかいない自分がいかに大切か、そしてお母さんがどれくらい貴重なエネルギーと心であなたを産んでくれたかを話します。壇上から話しても、子どもたちは心を開きませんから、壇上から降りて子どもたちの中に入って、質疑応答もその場でしながら話していきます。

 中学3年生になると、男女の心と体の大きな違いに話が移ります。男子は、女子の心と体に対する思いやりについて、女子には男子の体の変化と本来持っている心のうちを話します。だいたい、女子は男子の体の変化をあまり知らないでしょ?  男子の思春期には、相手を攻撃して征服したいという特性を持つテストステロンという性ホルモンが駆け巡っているという話や、サーモグラフィで撮った通常時と勃起時のペニスのスライドを見せて、“射精でおしまい”の男の子の体への理解を深めるようにしています。

 高校生になると、具体的なやり取りが増えてきます。どんな高校に行っても、なにが聞きたいか、心配かという生徒たちの反応はほぼ同じ。男子の場合は、セックスへの不安、コンドームの着け方、マスターベーションの悩み、自分のペニスの大きさや包茎について、女子は月経の心配事、避妊についての質問が多いですね。先生方が驚くほど一生懸命に聞きますよ。

 時間的な余裕があるときは、覚醒剤についても話します。最近は、コンビニの周辺で簡単に覚醒剤を入手できるようになり、薬物乱用の若年齢化が大きな問題になっています。とくに「痩せるから」と誘われ、蝕まれる女子が増えていて、いかに“痩せていることは美しいこと”とまくしたてるマスメディアの情報に躍らされているかがわかります。私のクリニックにも覚醒剤中毒の女子高校生が妊娠して来ることもあります。20年前には、こんなことはもちろんありませんでした。高校生に覚醒剤の話をしなければならないような状況になったのは、ここ数年の大きな傾向です。大人として、若者たちのために真剣に取り組まなければならぬ事柄と受け取り、広い意味での性教育のひとつとして考えています。

 

文・取材 三好 菜穂子

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『REBORN』24号(1999年7月発行)に掲載したものです。

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