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性教育
性教育は、
生まれたときから始まっている
  斎藤益子さん(東邦大学医学部看護学科教授)
REBORN第24号より

 平成4年から小学校の教育課程に性教育が取り入れられたこともあって、地域や学校で助産師が性教育に関わる機会が増えています。助産師が性教育に関わる場面は未就学児から更年期まで幅広くありますが、とくに重要性を感じるのが思春期の子どもたち。
 この年代の背景には必ず性があり、私が性教育に関わった高校のデータでも、性体験のある生徒は40〜50%います。「エイズに感染するより、妊娠のほうが気になる」という意識調査の結果にもあるように、性感染症(STD)を軽く考えている若者が多く(日本性教育協会調べ・1998年)、STDが10代で急増しています。こうした実態から、高校生にはクラミジアやヘルペスに感染した患部のスライドを見せたり、STDから不妊症になることもあるなどSTDの危険について強く話すようにしています。

 以前勤務していた助産師学校では、高校の性教育の実習をしており、年齢の離れていない学生たちが高校生のなかに入ることで、仲間カウンセリングの効果も得られました。今後は、助産師がスクールカウンセリングに関わったり、教師への情報提供もしていくなど、もう一歩踏み込んだ地域での活動ができるようになるといいと思います。平成13年から大田区内の中学校の性教育を学生たちと一緒に始めました。今、高校生ではなく中学生を対象に性教育を進めていく必要性を強く感じています。

 日本では、即物的な不倫やセックス産業などは野放しになっているのに、男と女がお互いを慈しみ、大切にする土壌は乏しいように感じます。家庭のなかに豊かなセクシャリティーを育める環境があるなら、学校での性教育は最小限の専門知識を教えるだけで十分なはず。
 本来の性教育は生まれたときから始まっています。まず親自身が、生きること、子どもを育てることについて、しっかり子どもに伝えられているか、一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。

文・取材 三好 菜穂子


参考文献:『家族計画指導の実際』   木村好秀、斎藤益子共著 (医学書院)

*齋藤益子さんは、"さいとうますこ"名義で『Iモードの乙女たち』(2000年 インターメディカル発行 ¥1000)を書かれました。これは中・高校生向けに書かれた性教育の本。中・高校生の性教育のテキストとしても使われています。

 

『REBORN』24号(1999年7月発行)に掲載した記事を、2002年5月に一部訂正・加筆したものです。


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