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陣痛促進剤
陣痛促進剤
REBORN第11号より

 
 産む人も病院もすごく気になるこの薬。慎重な使い方が、日本の隅々に浸透することを切に願うと共に、現代人が変に慣れてしまった「薬」というものとのおつきあいを見つめ直し、薬とは何なのか、本来何のためにあるのか、を考えるべきだと思います。

<構成>河合 蘭
<文>小栗久実子/三好菜穂子
<イラスト>宮下真沙美


REBORN本誌掲載時は実名でしたが、インターネットではプライバシーの観点から匿名しました。何卒、ご了承下さい。

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<電話&インタビュー>

出産体験者の方に聞きました
1.陣痛促進剤を使いましたか
2.それをどう感じていますか
3.使った場合はどんな説明がありましたか


医療者に聞きました
1.勤務先での促進剤使用状況
2.それを適切だと感じていますか
3.・・・の答の理由  
 

出産体験者の方に聞きました
1.陣痛促進剤を使いましたか
2.それをどう感じていますか
3.使った場合はどんな説明がありましたか


●個人病院で第1子、別の個人病院で第2子出産(千葉)
1.使わなかった。
2.2人とも予定日より早い37週での出産だったので、運良く使わずに済んだ。友人の話をきくと、予定日が1日過ぎただけで使用されている場合もあり、母児の安全というより、病院の都合で使われている傾向があるように感じた。産婦自身も、自分の体調にあったケアをしてくれる病院かどうか、確認する必要があると思う。

●個人病院で第1子出産(東京)
1.予定日の1週間前に破水し、陣痛があったものの「破水して3時間経っているから」という理由で、腕に陣痛促進剤の注射を打たれた。
2.お産の最中は無我夢中で、先生にお任せ状態だった。無事に生まれてよかったが、2人目の際は、ちゃんと聞くつもりでいる。
3.「自然に産みたい」という意向を、医師が理解してくれていると思っていたが、注射については説明が得られず、その医師が急死されたので、結局聞かずじまいになった。

●総合病院で第1子、2子、3子出産(東京)
1.第2子(現在23歳)が、予定日より10日遅れたので経口の陣痛促進剤を飲み、その晩に出産。
2.今のように被害報道もなく、無事に生まれたので、抵抗感は感じなかった。まわりから「まだ産まれないの?」と聞かれることが嫌だったこともあったかもしれない。その第2子も1年前に出産。薬も使わずに済み、安産でホッとした。
3.「遅れているので、今晩あたり産みましょう」と言われた。

●元看護婦で、NICUのある産科・小児科病院で第1子第2子、個人病院で3子出産 (兵庫)
1.3人とも切迫早産気味だったため、陣痛を止める方の薬を使った。
2.2人め以降は『ウメテリン』という薬のお陰で臨月で出産でき、本当にうれしかった。
3.「張りを止める薬」と言われた。以前の勤め先の先輩に『ウメテリン』について聞くと「よく使われている最新の薬」とのこと。また、1人目のとき高濃度点滴でショック状態になったので、気になったことは話を聞いてくれそうなスタッフに聞くようにした。言ったことは無駄にならないし、言わない限り、何も変わらないと思う。

●助産院で第1子出産(石川県)
1.使用せず。
2.薬を使われるのは嫌だったし、病院で管理されて産みたくなかった。
自分の力で、自然なお産をしたかったので、助産院を選んだ。

●新潟県の個人病院で第1子出産(東京都) 
1.微弱陣痛で24時間子宮口が開かず、2日目の朝10時から1時間おきに3回、錠剤を内服。1錠飲むたびに強くなり、午後4時半に出産。
2.飲み始めたらかなり陣痛が強くなり、副作用? と少し怖い気もしたが、陣痛が始まってから2晩徹夜していたので体力も落ち、しんどかったので飲まなかったらどうなっていたか。結果、何事もなかったのでよかったが、どちらがよかったかはわからない。
3.「陣痛がなかなか強くならず、子宮口が開かないので薬を飲みましょうね」と言われただけで、薬そのものについての説明はなかった。

●市民病院で第1子出産、福岡市の個人病院で第2子出産、(和歌山県) 自宅で第3子出産。
1.第1子のときは分娩室に入ってから微弱だと言われ点滴。第2子のときは産道が狭いから予定日を超えないように産ませたいと言われ、予定日の朝入院。すぐに点滴し、子宮口が開かないのでバルーンも入れられた。第3子のときは、陣痛がきて病院へ行こうとするうちにどんどん強くなり、自宅にて自然に出産した。
2.病院側の都合で使用されたように思う。安全を考えて管理下で産ませたいのだろうが、無理に陣痛をおこし、子宮口を開いた第2子の出産は辛かった。
3.2回とも説明はなく、こちらも、わからないのでされるままという状態だった。産む側にもある程度の知識があるほうがいいと痛感。第3子を自宅でとてもリラックスして出産でき、自然に産むことのよさを実感した。

●個人病院で第1子出産(神奈川県) 
1.使用せず。
2.できるだけ薬などは使わず、自然に出産できると聞いて選んだ病院だった。経過が順調で、使用する必要がなく、よかった。
3.出産が近くなると、医師の出産方針を聞ける「マタニティ・サロン」という会があり、その場でいろいろ質問できた。

 

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医療者に聞きました

1.勤務先での促進剤使用状況
2.それを適切だと感じていますか
3.・・・の答の理由  


●公立病院助産婦(千葉県) 
1.計画出産を推進しており、65%の妊婦に分娩誘発。入院予定日前に自然陣発した場合も多くは入院後、促進剤を使用。
2.適切とは思わない。
3.妊婦には外来受診中より安全のためと説明し、納得させていた。自然分娩を希望する人は早めに転院していたようだ。本当の理由は、医師が夜間や休日に働きたくないからだと思う。助産婦は皆若く、医師にふりまわされていた。

●総合病院産婦人科医師(新潟県) 
1.午前中に自然陣痛で入院し、夕方まで、つまり人手のある時間帯に生まれそうになければ点滴開始。また、陣痛が明らかに弱い場合や41週と3日すぎてもお産が始まる兆候のない場合は入院して内服する。
2.必要な誘発もあるが、使いすぎだと思う。
3.当番の医師によって対処が違う。自分は産婦に希望を聞き、待てるときは待つが、上司の判断で決められてしまうこともある。

●助産院の助産婦(愛知県) 
1.現在はないが、3年前まで勤務していた産院では、破水の全例、予定日超過、ベビーが大きそうな人、計画出産を希望した人に使用していた。
2.産院に勤務していたときは仕方ないと思っていたが、いまはそう思わない。
3.助産院でお産を介助するようになり、待てば状況がよくなると実感。お産の兆候がないのに誘発すると、無理がかかって3日、4日と産婦はドロドロに疲れてしまう。みかけの予定日にとらわれないで待つべき。

●助産院の助産婦(長野県) 
1.使用しない。以前は総合病院に勤務していた。陣痛促進剤の使用も含めて、自分の考えと違う点について緕tと何度も話し合ったが、全く変わらず、方針についていけなかったので辞めた。その病院では、医師の都合で使用されることがしばしばあった。

●病院助産婦(東京)
1.必要なときのみ使用。微弱陣痛など医学的に促進が必要と思われる場合や、本人が誘発を強く希望する場合に限り、ビショップスコア(内診所見の採点基準、9点以上が成熟とされている)を判断した上で使用している。
2.必要なときは、仕方がない。
3.「母児安全のため」の一言につきる。

●看護学校専任教員(北海道)
1.勤務先の病院は、薬には頼らず、助産婦も医師も「待つお産」を心掛けているので、あまり使用されていない。使用するのは、予定日超過(1週間は待つ)で胎盤機能が落ちてきた場合や、破水をしてから24時間以上経過しても、陣痛がなかったり、微弱の場合に感染を防ぐために使用。
2.不用意には使っていないと感じている。
3.促進剤を使うケースは、使わない場合のリスクの方が高いから。私自身は、7年ほど前から「母性看護学」の「妊娠・分娩」の講義で、子宮破裂など陣痛促進剤の副作用について学生に話している。

●総合病院助産婦(大阪)
1.微弱陣痛と過期妊娠(42週以降)のみ使用。
2.羊水混濁があったり、産婦さん自身が疲労しきっているなど、それ以上待っても、良い影響がないケースに限っての使用なので、仕方がないと思っている。
3.以前は誘発分娩が盛んに行われていたが、5〜6年前より世論の影響もあって、「自然なお産」への意識が病院内でも高まってきた。アクティブバースを勉強している助産婦は、なるべく薬を使わずに出そうと努力しているし、母親学級でも陣痛促進剤がどんなものかを教えている。

●看護学校専任教員(元総合病院助産婦)(千葉)
1.以前、勤めていた国立病院では、お産は日中に済ませるという方針で、ほぼ全例が計画分娩だった。
2.勤めはじめたばかりで、仕事を覚えることが精一杯で、病院の方針に疑問を感じなかった。今は、自然に産めるなら自然出産がいいと思っている。
3.月に5、60件もの出産があるという状況では仕方がなかったかもしれない。学生には「母性看護学」で、「妊娠・分娩」の講義をしているが、教員が行うのは正常分娩のみで、異常編は、医師が担当しているので、陣痛促進剤の副作用など、どこまで学生に話しているかわからない。

●総合病院助産婦(大阪)
1.以前、勤めていた総合病院では陣痛促進剤が濫用されていた。
2.使用することで、危険を逃れたケースはまれで、使わなくてもいい人がほとんど。点滴のポンプが足りなくなることもあり、羊水混濁、胎児仮死など無茶なお産が多かった。本当のことを、産婦さん自身知っていたら、拒否したに違いないと思うと、騙しているようで後味が悪かった。
3.月160件ものお産がある割にスタッフ不足で、一人ひとりに十分対応できず、良いケアができない。また、全体的に見て、産婦さん自身もおとなしすぎると思う。もっと医療者に対して説明を求めたり、意思表示をしてもいいのでは?

REBORN紙 第11号 (1996年4月発行)に掲載したものです。

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