フランスのクリスマス

キム・ヤンヒャン

まもなく、パリからREBORNにフランスの子育て事情を送ってくれることになっているキムさん。
彼女からフランスのクリスマスが届きました。来年の、彼女の連載にご期待下さい!(蘭)


あなたにとってクリスマスって」?とフランス人に聞くと『ファミリーが集まる時』!と返されることが多い。おばあちゃんからひ孫まで、家族・親戚が勢揃い。日本のお正月とお盆が合わさったイメージだ。24日の夜と25日の昼に5〜6時間かけてご馳走を囲んでおしゃべりし、子供達はサンタさんからのプレゼントに狂喜する。

クリスマスメニュー

クリスマスメニューは地方、家庭ごとに異なるものの、シャンパン、フォアグラ、七面鳥、ブッシュ・ド・ノエル(木株の形をしたケーキ)を思い浮かべる人は多い。

シャンパンで乾杯し、特別なお祝いの始まりを告げる。フォアグラはおいしくて高いイメージがあり年に1度クリスマスしか食べない家庭も多い。脂肪分たっぷりのフォアグラをバターたっぷりのパン、ブリオッシュやパン・ド・ミーにのせて食べる家庭もある。のっけから胃にすごいパンチ。七面鳥の丸焼きにはクリスマスならではの栗の付け合せがよく添えられる。正月の栗きんとんといった存在か。

ブッシュ・ド・ノエル(写真・左)はクリスマスの代表的なお菓子。その昔、ケルト人が冬至の祭りで木の薪を燃やしていた習慣に由来する。

24日に人々は大薪(ブッシュ・ド・ノエルの本来の意)を拾い集め、家のあるじが暖炉に据え置き、前年から残しておいた薪の燃えさしを使って火をつける。熱くしたぶどう酒や塩、胡椒をかける地方もあるらしい。

この薪は翌日25日まで燃やし続けなければならない。火が絶えてしまうと不吉なことが起こるという伝説があるからだ。25日が過ぎても自然に消えるまで放っておく。暖炉に残った燃えさしは災害や不吉な出来事から家族を守ってくれるお守りとして、翌年まで大切に保管されていた。この習慣は、暖炉がストーブに取ってかわれた19世紀頃から次第にすたれていったが、今ではケーキの形をとってその名残をとどめている。

クリスマス特別料理を味わいながらワイワイおしゃべりしている大人たちの横で、子供達がアニメビデオなど見ながらサンタさんが来るのを待ちわびている姿はよくある光景だ。

サンタの話

5〜6歳までの子供の多くは「24日の夜、贈り物をくれるのはサンタさん(フランス語ではPERE NOELと言う)」と信じている。

フランソワーズ(45才)とルノー(40才)にはイリス(8才・写真下)とルーシー(2才・写真左)の2人の娘がいる。

クリスマスをパリの自宅で祝う彼らは、24日の夕食時には暖炉の上に1杯のシャンパンとサンタの形をしたお菓子を置いておく。

夕食が済むと『プレゼントを配っている最中の』サンタさがしに出かける。アパルトマンの屋根や月を見上げ、目をこらしながら夢中になってみんなでサンタをさがすのだ。

家に帰ると暖炉の上のシャンパンは半分、ケーキはかじられ(出かける直前にパパかママのどちらかがトイレに行く振りをしてしかけておいた)、プレゼントの包みが置かれている。「きゃー、サンタさん来たんだ〜」!

今、イリスはサンタがいないことを知っている。「本当はサンタなんていないんでしょ」と質問してきたのは5才の時。いろいろ考えた挙句、ママがきいてみた。「イリスはいると信じたい?いないと信じたい」?「う〜ん、いると信じたい」。「じゃあそうよ。大切なのはあなたがどう信じたいかよ」。

翌年。「ママ、やっぱりサンタはいないのよ」。そろそろ話す時期だと思ったママは本当のことを説明した。口がへの字に曲がり、涙がぽろぽろ、大泣きに泣いて「パパ、ママのうそつき!!!」と親を責めはじめた。

パパとママはゆっくり静かに話し始めた。「いると信じて嬉しかった、幸せな気持ちだったでしょ。パパとママはイリスにこのすてきな気持ちを味あわせたかったの。だますためではなくてね。でも、もう本当のことを知ってもいいほどイリスは大きくなったと思う。だから今こうしてお話しているの。本当のことを知るのはつらいこともあるけど、大人になったら出来るようになってくるのよ。わかる?」

泣き止んだイリスはしばし一人で考えこみ、ちょっぴり大人びた表情で「サンタさんの存在を信じさせようとしてパパとママは大変だったでしょ」と言ってくれたという。

今イリスは、妹のルーシーにサンタさんのお話をしてあげているらしい。

サンタがどんな風にやってきてどんなプレゼントをくれるのかは家庭によってさまざま。でもサンタといえば子供達が小さい胸をドキドキさせて目を輝かすのはどこも変わらない。サンタがいないことを知るのは、大人になるための初めての通過儀礼なのかもしれない。

 

一方、大人にとってのクリスマス。子供が生まれる前と後ではクリスマスに対する思い入れが変わった人は多い。カリン(30才)が言う。「カミーユ(2才)が生まれてから初めてツリーやリースを家に飾るようになったわ。きちんとお祝いしなきゃと思うようになったの。でも、私は敬虔なキリスト教徒じゃないから宗教儀式としてじゃなくてフランス、ヨーロッパの伝統としての意味でね。前はちょっとわずらわしかった家族・親戚の集まりも、今年からはカミーユを親戚の子供達に会わすいいチャンス。楽しみだわ」。

子供を持ってファミリーの大切さを知る、伝える子供が出来て伝統の重みを知る人は多い。

「ママがクリスマスはファミリーが集まってきちんとお祝いしなきゃダメ!って言ってた意味がやっと分かるようになってきたわ」。

自分が親になって初めて自分の親の気持ちがわかるのはどこの国も同じよう。子供に対する愛情がゆえに人は親らしくなっていくのだというのも間違いではなさそう。

JOYEUX NOEL(メリークリスマス)!

 

●キム・ヤンヒャン 
1965年大阪生まれ。京都大学文学部言語学科修士課程修了(専門はマレー語)。日本ユネスコ協会連盟でアジアの識字教育に従事。1996年より在パリ。仏人の旦那と息子(2002年9月パリ郊外セーブル市の公立病院で誕生。現在、仏・韓の2重国籍)と3人暮らし。フランスにおける女性の立場をテーマにした連載記事を日系新聞社に掲載中。現在在宅勤務。息子は1歳より託児所通い。