「実験的子育て雑感」

その1『一人娘は次女』

三宅はつえ

 妊娠中は毎日「妊婦日記」を書いたものだが、子供が生まれてからは「育児日記」はつけたことがない。「良いおっぱい・悪いおっぱい」の著者である伊藤比呂美さんが、やめた方がいいと仰ったからだ。んで、忘れた。ものの見事に忘れた。子供が小さい頃の記憶はもちろんあるのだが、断片的で、時間経過がぐちゃぐちゃだ。
 子供の成長と時間経過は微妙な関係にある。そりゃそうだ、3才児が歩いたってあたりまえだが、1才児の、最初の一歩は親には一大事。同じ「二足歩行」でも、その価値の違いは大きい。

 うちの娘は11才になる。『思春期』というオンナの子の人生の中では、なかなかおもしろい時期に差し掛かっている。日々のやりとりは、これから熾烈きわまりなくなるだろう。実のところ、いつ「うるせえ、ババァ」がでるか、楽しみで仕方がないのだ。こんなわくわくした気持ちも、そのうち「あれは、いつだったかなぁ」などと、呆けたこと言い出す自分が見えているので、まぁ、日々の雑感として書き留めようかと思ったのが、この雑文だ。ほんとにおババになったら、ひっぱりだしてウヘウヘしながら読んでやろう。
 でも、こんなこと書いてるのがバレたら、さぞや娘に怒られるだろうなぁ。まぁ、お気楽は母の元に生まれた身の不幸を嘆いてくれ。
 
 そんな我が家の娘は一人っ子だ。が、次女である。
 別に戸籍の関係とかではなく、「事実上次女」なのだ。そして、長女は私だ。
 そんな馬鹿な!と思われるだろうが、我が家ではそういう表現がふさわしい。とっくみあいの大げんかは、まるで兄弟げんか。おもちゃや絵本は「長女所有」。偉そうに「次女」に貸してやるのだ。

 世間様では「一人っ子は○○だ」と、よく言われる。この○○の中には「わがまま」とか「打たれ弱い」とか「のんびりしている」といった単語が入る。だいたいが、あまり好意的な表現ではない。一人っ子の親としては、やっぱりこんな言葉が、ちょっとだけ気になる。

 「そうだ!私が『おねーさま』になりゃいいんじゃん」
 そうと決まれば、話ははやい。実は本人もいつ決めたんだか忘れちゃたが、我が家の教育基本方針は『一人娘は次女』に決まったのだ。

 だいたいが我が家は通常母子家庭で、家族構成は「長女」と「次女」だけ。「名誉長男」の夫はスペインに置いてきてしまったので、家族みんなで過ごすのは年に1ヶ月あるかないかだ。別に好きこのんで夫を置いてきたわけではなく、私の母の持病が悪化し、一時は寝返りもうてないようになったからなのだが。

 正直、娘にはよく泣かれた。「ふーちゃんたちは家族だよね。家族が一緒に暮らせないなんて、ヤだ!」シクシクシクシクシクシクシクシク.....
えぇ〜い、泣くな! おねーさまがついてるだろう! 親をとるか夫をとるか。そりゃ、元気な夫より病気の親でしょ。君にはそんな苦労をかけないようにしよう!というのが、私の老後の目標だなぁ。

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